烏城のお膝元で「岡山の文化」にふれる旅

烏城のお膝元で「岡山の文化」にふれる旅
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岡山市の中でも当時の「城下町」にあたる場所は、今でも伝統と文化が息づいています。街のランドマークでもある岡山城は、通称「烏城(うじょう)」とも呼ばれ、黒塗り・五面体という全国でも珍しいスタイルを持っています。その美しい姿が時を超えて11月3日にリニューアルオープンいたしました。今回は、岡山城の「磨きがかかった新たな魅力」と、周辺地の「大人も楽しい体験型アクティビティ」をご紹介いたします。

掲載日:2022年12月01日

ライター:観光ライター 杉原

実は岡山城、
全国でも珍しいお城でした

岡山城天守閣は、1597年(慶長2年)に豊臣家五大老の一人である宇喜多秀家(うきた ひでいえ)によって築城されました。全国的にも珍しい不等辺五角形の天守台をしており、リニューアルオープン後のロゴマークにも不等辺五角形が使われています。関ヶ原合戦以前の古式の天守で、その堂々とした構造は、織田信長の安土城天守閣を模しているそうです。岡山城が不等辺五角形なのは、元来の地形を活かしたものだと言われています。

岡山城は金の鯱や、金の桃など、黒塗りの城壁とは対照的な屋根の装飾も特徴的です。初代城主である宇喜多は「戦うだけの城では意味がない」と、比較的平坦な土地に美しい岡山城を築城し、城下に人の往来を生み出したそうです。当時の岡山市(岡山城周辺)の人口は5万人にも達し、これは全国でも稀な人口だったといわれています。

芸術的な傾斜でわたしたちを魅了する「石垣」。
整然と石が並ぶ算木積(さんぎづみ)や、丸く削らないままの石が使われた野面積(のづらづみ)など、石垣は当時の建築の味わいをそのまま残しています。城主が宇喜多秀家から小早川秀秋へと代わる際には、石垣が拡幅整備され、本段東側の石垣を確認すると改修の継ぎ目が分かります。

岡山城で体験・体感する歴史の「重さ」と「大きさ」

馬の大きさ、銃の重さなどを「体感できる仕掛け」が随所に散りばめられた、1階の体験・記念撮影コーナー「体感 戦国絵巻」。
なかでも男の子たちからの熱視線を集めていた展示が、銃と刀のレプリカです。銃は馬にな乗った状態で使う「馬上筒(ばじょうづつ)」と、安定した状態で狙いを定めて使う「火縄銃(ひなわじゅう)」の二つ。比較的小さな馬上筒でも1キロ近くの重さがあり、馬を操りながら片手で敵を狙うのは至難の技だったようです。

刀は短い「脇差(わきざし)」と「太刀(たち)」の二つが並び、体験コーナーの中心で鈍い光を讃えていました。太刀も1キロ近くあり、腰に携えたまま日常生活をおくっていた武士は、よくぞ重さに耐えていたものだと感心しました。両者とも実際の大きさと重さを忠実に再現してあり、持った時の重みに驚く方ばかりでした。

城巡りのさいごは、烏城カフェでほっと一息

お城を一周して、疲れた頃に嬉しいのが「併設されているカフェ」の存在。
興味を惹かれる歴史の逸話等が城全体にちりばめられているため、歴史好きの方なら1~2時間程度はかかるのではないでしょうか?
カフェには、珈琲や紅茶だけでなくミニパフェやクッキー等の甘味もあり、ほっと一息つくことができます。カフェのテーブルが並ぶ前には大きなスクリーンがあり、岡山城の解説動画を観ることもできるため一石二鳥です。

知っているようで知らなかった岡山城の魅力は、リニューアルオープンを経て更に濃密になっておりました。皆様も岡山観光プランのひとつに、是非とも「烏城」を追加してみて下さい。

備前焼の素朴な魅力を肌で感じる

岡山城の敷地内で備前焼体験ができる「備前焼工房」。岡山城と同時に11月3日にオープンされました。以前は、岡山城内部に備前焼工房を構えていたそうですが、更に素敵で備前焼体験に集中できる空間にパワーアップ!「岡山城のお膝元」で世界に一つだけの備前焼を作ってきました。
まずは、受付で作りたい器選び。平皿や箸置き、小鉢など、器ごとに難易度が書いてあるので、自分の器用さに合わせて選ぶこともできます。お子さんや不器用さんにも優しい体験です。私は兼ねてより欲しかった「片口の酒器」を作るため、一番形状の近い「小鉢」を選びました。

準備するものはこちら。カバンはテーブル横のかごにしまい、エプロンをつけて準備を整えます。手で回せるタイプのろくろと、「器の作り方」が一人ずつにセットされます。

さっそく土にふれます。重量感のある備前焼の土は、冷たくて気持ちいい。こちらでの備前焼作りは、ろくろを回してドロドロになる体験ではなく、「粘土を少しずつ形成していく」という感覚です。まずは土の塊のど真ん中に親指を立てて空間をつくり、親指であけた穴を少しずつ広げていきます。

次は、備前焼の完成形を思い描きながら形成をしていく段階です。備前焼の焼き上がりは、器の全体が約2割程度小さくなるとのこと。薄すぎると焼いている際に割れたり、ひびが入ったりするため、少しずつ土を伸ばします。厚さの感覚がなかなか掴めなかったのですが、スタッフさんが優しく教えて下さるため安心でした。

ようやく完成!私の場合、完成までの所要時間は45分程度でした。焼き上がりは約2か月後です。
釉薬を使わず、炎と土のみで作り上げられる備前焼は、ひとつひとつの焼き上がりが微妙に変化し、同じものは出来上がりません。その飾らない姿が、備前焼の一番の魅力だと考えています。備前焼の酒器で日本酒を飲むのが待ち遠しいです。

皆に知ってほしい岡山の伝統工芸「烏城彫」

1925年に誕生し、100年の歴史に近づく烏城彫(うじょうぼり)。
その伝統をワークショップで体験できるって皆様ご存じでしたか?
日本の美しい「紋(もん)」を彫る体験は、まさに写経にも匹敵する集中の極致。
瞑想をするように静かで、それでいて楽しく会話もできるワークショップで非日常を味わいつつ、素敵な旅の思い出もgetしましょう!

トータルで3時間のワークショップは、プロダクトチーム藤原さんの烏城彫の解説からスタートします。小学校以来の彫刻刀を使い、まずは彫りの練習を1時間かけて行いました。

次は実際に彫る作業へ。お好みの紋シールを貼り、その上から彫っていきます。選ぶ紋にもよりますが、細かい作業であるため、参加者の皆様からも集中が伝わってきました。途中でおやつ休憩をはさみ、会話も楽しみながら彫刻していると2時間があっという間に過ぎていきました。

有り難いご縁と許可をいただき、スタッフさん・参加者さん全員で記念撮影。彫刻体験中には、烏城彫りの後継者として魅力発信に取り組む一三省吾さん、砂亜紗さん、ディアンドレさんの20代スタッフメンバー3人からも手ほどきを受け、烏城彫の未来に想いを馳せました。

岡山市公式観光情報 OKAYAMA KANKO.net