最上稲荷からパワースポット「八畳岩」へ

最上稲荷からパワースポット「八畳岩」へ
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三大稲荷の一つに数えられ(諸説あります)、1200年の歴史がある岡山市北区の「最上稲荷」。正式名称は「最上稲荷山妙教寺」。お寺でありながら鳥居をそなえるなど、「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」の形態を許された珍しいお寺です。
また、最上尊信仰発祥の地としても知られ、そのご利益を求めて多くの人が参拝します。2023年新年、最上稲荷を詣で、さらに、最上尊降臨の霊地として知られるパワースポット「八畳岩」。その昔、ケーブルカーの終着駅があったという奥ノ院駅跡地まで子どもと一緒に歩いてみました。

掲載日:2023年01月17日

ライター:観光ライター 頼實

いざ、門前町を歩く

例年、正月3が日で60万人が初詣に訪れるという最上稲荷。少し人出が落ち着いた1月6日に参拝しました。
3が日を過ぎても、門前町は食べ物の屋台や射的の店などでとても賑やか。お団子やクレープ、鮎の塩焼き、飴屋などのお店が所狭しと並び、正月らしさが存分に楽しめました。
「見付屋(みつけや)」さんで教えてもらったのは「吉兆(きっちょう)」という縁起物。「古いものを返し、毎年新しい吉兆を皆さん買い求めます」と見付屋の主人・秋山二三夫さん。五穀豊穣、商売繁盛を願って、吉兆や熊手を求める人が大勢訪れるといいます。

吉兆には、鯛やサイコロ、金俵などの飾りが付いています。「一つ一つの飾りに意味があります。鯛はめでたい、サイコロは芽がでる、扇は末広がり。最近では、干支の飾りも付くようになりましたね」。
吉兆は、サイズや飾りの種類によって値段が異なり、見付屋さんの店頭にあったのは、1200円〜5500円。節分の頃まで店頭で見ることができるそうです。

店頭には、そのほか熊手や招き猫などの縁起物もありました。招き猫のお顔は、時代ごとに変化していっているそうなので、見比べてみては。

駐車場から仁王門まで約600メートルも続く門前町には、約50店舗あります。
門前町は、どこを切り取ってもノスタルジックな雰囲気がたっぷり。外国からの観光客にもオススメしたい参道です。

仁王門から本殿へ

仁王門を抜けて階段を上ると、見えてくるのが神宮形式を併せもつ本殿(霊光殿)です。
開山千二百年記念事業として、5年の歳月をかけて1979年に完成しました(写真は、昨年11月の紅葉シーズン)。
節分の日(今年は2月3日)には、本殿および結界廊で「節分豆まき式」が盛大に執り行われます。総勢750人の福男・福女が10万袋の福豆を投じるこの行事は、最大稲荷の三大祭典の一つです。

最上稲荷山妙教寺の山門。(紅葉シーズンには大イチョウが美しいです)。
また、最上稲荷境内には、全国的にも珍しく縁結び、縁切りの両方の神様が同じエリア(縁の末社)に祀られています。どちらの神様も江戸時代から信仰されてきた「七十七末社」の一つです。一巡してお参りする習わしがあり、美麗、人気、愛嬌などの神様もいらっしゃるそうです。

最上稲荷と言えば、「ゆずせんべい」と言うほど、門前町に並ぶほとんどの商店で販売していました。それぞれ商店ごとに食感やパッケージが異なるので、お気に入りを見つけてみては。
写真は「おかもと屋」のゆずせんべい(120g350円)。店頭では、機械で焼き上げる様子を見ることができます。

おかもと屋の「稲荷まんじゅう」は、岡山県産もち粉を使用していて、モチモチとした食感が特徴。鳥居の模様がこし餡。宝珠(ほうじゅ)の模様はゆず餡。出来立ての熱々が食べられて、1個120円で、バラ売りもあります。

霊験あらたかな参道を歩く

八畳岩参道への入口(昨年11月の紅葉シーズンに撮影)は旧本殿(霊応殿)横にあります。
入口からすでに霊験(れいけん)あらたかな空気が漂っています。実は八畳岩は、岡山でも有数のパワースポットとして知られていて、隠れた人気スポットなのだそう。

八畳岩には、奈良時代(752年)、時の女性天皇・孝謙(こうけん)天皇の病気平癒のため、開山・報恩大師(ほうおんだいし)が八畳岩の岩窟にこもり祈願したところ、最上位経王大菩薩(さいじょういきょうおうだいぼさつ・最上尊)を感得したという云われがあります。
そのため、最上尊が最初に姿を現した聖域・最上稲荷総本山の根本として、古くから篤く信仰されてきました。
旧本殿から八畳岩まで片道約30分とありますが、山道に慣れていない場合は1時間弱みておいても良いかもしれません。

本瀧横には、急な階段(延寿乃石段)が続きます。
この場所は、かつて、奥ノ院駅行きのケーブルカーが走っていた名残を残す坂道です。階段脇には、当時の排水溝が残っていました。よく探してみると、レールのボルトなども残っているそう。ケーブルカーの詳細は後述します。

八畳岩への参道は、坂あり階段あり。歩き慣れたスニーカーや登山靴で歩くのがオススメです。
30分ほど歩くだけで、体の奥から熱くなり汗が噴き出てきます。正月中、運動不足だったためか、とても良い運動になりました。

備中高松を一望できる八畳岩の眺望

八畳岩への途中、「題目岩」に出合います。高さ8mの巨石に、お題目が刻まれていることからこの呼び名になったそう。また、法華経の守護神•鬼子母神の姿も石に彫られています。巨石が積み上がった様子は迫力ある光景です。題目岩付近まで階段があり、近くまで上ることができます。

八畳岩には祠がありますが、その岩の下には、開山・報恩大師が籠り祈願したという岩窟も。報恩大師は、観世音菩薩普門品(かんぜおんぼさつふもんぼん)の呪を唱えて、二十一日目の早暁に最上尊を感得されたそうです。
この付近には不思議なピリっとした空気感が漂っていました。よく晴れていれば、八畳岩から眼下に、備中高松エリア一帯を望むことができます。

ケーブルカー終着駅・奥ノ院駅跡

八畳岩からさらに上を目指し、昭和初期、ケーブルカーの終点駅があったという奥ノ院駅跡地を目指しました。
1929年、最上稲荷境内の山下駅(旧本殿付近)と奥ノ院駅を結ぶケーブルカーが開通。奥ノ院駅前には、シーソーやブランコなどの遊具や、うどんなどを提供する茶店が2軒あるなど大層賑わっていて、参拝後、大勢の人々が訪れたといいます。

現在、この場所には、当時の名残であるラジオ塔が残されています。
高級品であったラジオを塔の上に設置し、広場でラジオ体操が行われていたほか、音楽や落語などの番組が放送されていたそうです。ラジオ塔が建てられたのは1939年。80年以上前からこの地に残る近代化遺産の一つと言えます。
全国各地に450基ほどあったラジオ塔ですが、現存するのは20基ほどだそうです。

ラジオ塔のすぐ近くには、ケーブルカーの乗降場跡らしき遺構も。
遺構は木々で覆われて危険な場所にあり、立ち入りは制限されているので、遠くから眺めるだけです。

仁王門近くにある立て看板を読むと、吉備線稲荷山支線「稲荷軽便鉄道(いなりけいべんてつどう)」とケーブルカー(中國稲荷山鋼索鉄道・ちゅうごくいなりやまこうさくてつどう)について詳しく知ることができます。
1911年、参拝者のため、稲荷駅(現・備中高松駅)から稲荷山駅(中鉄バス乗り場・現在は運行休止)間に開通した「稲荷軽便鉄道」。奥ノ院駅跡地にあった遊園地まで参拝客を運んだケーブルカー。
最上稲荷ゆかりの2つの廃線跡を巡り、往時を偲んでみるのも良いですね。

岡山市公式観光情報 OKAYAMA KANKO.net